株式へのフルインベストメントは有りか?
「株式へのフルインベストメントは有りだと思われますか?」というご質問をいただいたので、今回は株式へのフルインベストメントについて書きたいと思います。
株式へのフルインベストメントとは、例えば資産運用の資金が1,000万円あった場合、1,000万円すべてを株式投資するということです。
すべて株式へ投資することで大きなリターンを狙えますが、タイミングによっては逆に大きく資産を減らしてしまうこともあります。
結論
結論は、以下です。
- 10%〜20%程度債券を組み込むのがオススメ(債券の利回りが低い現在では、10%~20%を現金として保有で代替してもよい)
- ただし、資産が数百万円程度の場合は、時間や手間・手数料などを考えると、株式へのフルインベストメントも有り(ポートフォリオの割合を考えている時間や調整する時間を、お金を稼ぐことなど別のことに充てた方がいい)
株式へフルインベストメントするというのは、リターンを最大化したい場合に取る戦略だと思います(レバレッジの利用は除く)。
しかし、リターンを最大化したい場合でも、資産が大きくなった後は10%〜20%程度の債券(債券の利回りが低い現在では、10%~20%を現金でもよい)の組み込みをオススメします。
10%〜20%程度の債券を組み入れる理由は、以下2点です。
- 「株式へフルインベストメントする場合」と「10%〜20%程度債券を組み込む場合」で、期待されるリターンがほぼ変わらない。
- 損失を出す確率は、10%〜20%程度債券を組み込んだ方が低くなる。
この辺りは、「アセットアロケーションの最適化」という本で分かりやすく説明されており、そこで使用されているデータや図を引用して説明したいと思います。
以下は、1928〜2016年までの米国株と債券の年次リターンを、20年間を期間とした標本データについて、ブートストラップ法という手法を用いて算出した幾何平均リターン分布の統計量です。
ポートフォリオ | メジアン | 最悪の5%のケース | 損失を出す確率 |
株式のみ | 3.1% | -4.5% | 24.7% |
幾何平均の最大ポートフォリオ | 3.1% | -2.9% | 20.0% |
妥協ポートフォリオ | 2.9% | -1.7% | 15.0% |
シャープレシオが最大のポートフォリオ | 2.3% | -0.8% | 11.0% |
※「アセットアロケーションの最適化」のデータから管理人作成
各ポートフォリオの株と債権の割合は以下の通りです。
・株式のみ:株100%、債券0%(株へフルインベストメント)
・幾何平均が最大のポートフォリオ:株80%、債券20%
・妥協ポートフォリオ:株60%、債券40%
・シャープレシオが最大のポートフォリオ:株32%、債券68%
注目すべき点は、以下2点です。
- 「株式のみ:株100%」の場合と「株80%、債券20%」の幾何平均リターンのメジアンが同じ。
- 「株80%、債券20%」の方が、最悪の5%のケース/損失を出す確率共に低くなる。
つまり、債券を20%組み入れた方が、リターンは一緒なのに、損失を出す確率が低いということです。
そして、以下の図は、債券を組み入れ比率を変化させた場合のリターン(幾何平均)を示したものです。横軸が債券の組み入れ率で、縦軸がリターン(幾何平均)です。
※「アセットアロケーションの最適化」から引用
図の通り、債券の組み入れが0%〜20%までほとんどリターン(幾何平均)が変わらないことが分かると思います(10%ぐらいが一番幾何平均が大きく見える)。
つまり、繰り返しになりますが、10%〜20%の債券を組み込むことで、リターンを変えず、リスクを下げることが出来きるため、株へのフルインベストメントする意味が無いという結論になります。
※過去データを用いたシミュレーションのため、絶対にこの様になるかは分かりませんが、可能性は高い。
まとめ
以上、「株式へのフルインベストメントはありか?」というご質問について私の考えです。
最大のリターンを求める場合も、「株へのフルインベストメントはせず、10%〜20%程度債券を組み込むのをオススメします」。
ただし、「資産が小さい場合は、時間や手間・手数料などを考えると、株式へのフルインベストメントも有り」だと考えます。
最後に、ウォーレン・バフェット氏の言葉を引用して終わりたいと思います。ウォーレン・バフェット氏が、自分の死後に備えて、奥様に伝えた言葉です。
資産の90%はS&P500、残り10
%は政府短期国債に投資せよ ウォーレン・バフェット
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